ペーパーバックは電子書籍の延長ではなく、別の作業でした。判型の選び方、余白の落とし穴、背幅のある表紙、そして印刷コストから逆算する価格設定まで、順番に書きます。

支度中…
ペーパーバックは電子書籍の延長ではなく、別の作業でした。判型の選び方、余白の落とし穴、背幅のある表紙、そして印刷コストから逆算する価格設定まで、順番に書きます。
Kindle出版の費用は本当に0円か|内訳を全部書き出した
Kindle出版は0円で始められる、とよく言われます。実際そのとおりなのですが、出してみると「これは費用だな」と感じる場面がいくつかありました。かかるお金とかからないお金を、公式の数字を引きながら全部書き出してみます。
紙の本が、届いた日
電子書籍しか出してこなかった私のもとに、初めて紙の見本が届いた。段ボールを開けるとき、少しだけ手が止まった。画面の中にしかなかったものが、その日、重さを持っていた話。
Kindle出版のメリットとデメリットを正直に並べた
よく言われているデメリットと、実際にやってみて効いてくるデメリットは、かなり違いました。3年続けて実感しているメリットとデメリットを、両方できるだけ正直に並べます。
ほんの寺子屋は、師匠の伴走と仲間との学び合いで自分の本を世に出す出版コミュニティ。 気になったら、まずは見習いから覗いてみてください。
自分の書いたものが紙の束になって届いた日のことは、別の回に書きました。電子書籍を出したときとは、感情の種類がまったく違いました。
ただ、そこにたどり着くまでに何度かやり直しています。ペーパーバックは電子書籍の延長ではなく、別の作業でした。ここでは、紙で出すときに必要になることを順番に書きます。
電子書籍には判型という概念がありませんが、紙にはあります。ここを最初に決めないと、原稿の組み方が決まりません。
ペーパーバックの原稿には選べる判型が並んでいます。日本でよく使われるのは 14.8 × 21.0 cm、いわゆるA5判です。ほかにも 12.7 × 18.8 cm や 15.2 × 22.7 cm など、全部で12種類ほどが用意されています。
カスタム判型も可能で、幅10.16〜21.59 cm、高さ15.24〜29.69 cm の範囲で指定できます。
判型ごとにページ数の範囲が決まっています。印刷コストの表を見ると、モノクロは24ページから828ページまでの区分が設けられています。
24ページに満たない原稿は紙にできません。逆に828ページを超えるものは分冊が必要です。
同じ原稿でも、判型を変えると本の印象が変わります。小さい判型にすると文庫のような気軽さが出て、大きくすると資料の顔つきになります。
私は最初、なんとなくA5判を選びました。いまも実用書はA5、読み物は少し小さい判型と使い分けています。
ここが最初のつまずきどころでした。電子書籍はリフロー、つまり読者の端末に合わせて文字が流れる形式です。紙は固定されたページに文字を置きます。考え方がまったく違います。
紙の原稿はPDFで入稿します。判型どおりのサイズで、ページ番号が入り、章の始まりが正しいページから始まっている状態にしておく必要があります。
私が一度やり直したのは余白でした。
紙の本は綴じられるので、内側の余白を外側より広く取らないと、ノドに近い文字が読めなくなります。ページ数が増えるほど、この必要量は増えます。
画面で見ているぶんには問題なく見えるのですが、実際に綴じられた本を開くと、内側の文字が谷に沈みます。ここは実物を取り寄せて確かめるまで分かりませんでした。
電子書籍では気にならなかったことが、紙では気になります。章の途中でページが変わるのは自然ですが、章の始まりが前の章の続きから始まっていると、途端に素人くさく見えます。
章の始まりは新しいページから。奇数ページから始める、という流儀もあります。
電子書籍の表紙は表1だけですが、紙は裏表紙、背表紙、表表紙がつながった1枚のデータになります。
背幅はページ数と用紙の種類で決まります。つまり本文が確定してページ数が固まるまで、正確な表紙は作れません。
KDPには判型とページ数を入れると正確なテンプレートが手に入るツールがあります。これを使わずに目分量で作ると、背表紙の文字が表紙側にずれます。私はこれで一度作り直しました。
表紙の要件そのものは表紙の回に書いています。
紙は1冊売れるたびに印刷されるので、その費用が印税から引かれます。ペーパーバックのロイヤリティの式はこうです。
印税 = 印税率 × 希望小売価格 − 印刷コスト
印税率は希望小売価格の水準によって50%か60%になります。
Amazon.co.jpのモノクロの印刷コストは、110〜828ページで固定206円+1ページ2円です。カラー(標準)は72〜600ページで206円+1ページ3.50円、カラー(プレミアム)は42〜828ページで206円+1ページ4円になります。
200ページのモノクロを1,200円(税込)で出す場合。
税抜が約1,090円、印刷コストが206 + 2 × 200 = 606円。 60%なら 1,090 × 0.6 − 606 = 48円。
これを1,600円にすると 1,454 × 0.6 − 606 = 266円になります。
紙は価格を上げないと残りません。ここを知らずに電子書籍と同じ感覚で安く付けると、売れても手元に何も残らないという状態になります。詳しくは費用の回にも書きました。
図版が多い本をカラーにすると、ページ単価が2倍になります。200ページなら、モノクロ606円に対してカラー(プレミアム)は1,006円です。
図を白黒で成立するように作り直したほうが、結果的に読者にとっても安く手に入る本になります。
これだけは省かないほうがいいと思っています。
KDPには校正刷りを注文する仕組みがあり、印刷費と送料の実費で自分用の1冊を取り寄せられます。届くまで数日かかりますが、画面では絶対に分からないことが分かります。
私が実物で気づいたのは、余白の狭さ、フォントが思ったより小さいこと、そして表紙の色が画面より暗く出ることでした。どれも直してから公開しました。
ストアに並ぶまでの時間も電子書籍より長く、KDPのタイムラインにはAmazon.com以外のマーケットプレイスでは5日以内、内容の少ない本の場合は最大10営業日かかる場合があると記載されています。余裕を持って進めてください。
印刷コストの表では24ページからの区分が設けられており、上限は828ページです。判型や用紙の種類によって範囲が変わります。
できません。電子書籍はリフロー形式、紙は固定レイアウトのPDFです。判型に合わせて組み直し、余白とページ番号を整える必要があります。
使えません。紙は裏表紙・背表紙・表表紙がつながった1枚のデータで、背幅はページ数によって変わります。KDPのテンプレート生成ツールを使うのが確実です。
出版自体は無料です。ただし1冊売れるごとに印刷コストが印税から差し引かれます。校正刷りを取り寄せる場合は、印刷費と送料の実費がかかります。
印刷コストから逆算します。200ページのモノクロなら印刷コストが606円かかるため、これを大きく上回る価格でないと手元に残りません。
電子書籍だけでも本は本です。それは間違いありません。
それでも、紙で持ったときの感触は別物でした。重さがあって、厚みがあって、棚に置ける。書いたものが物になるというのは、思っていたよりずっと大きな出来事でした。
ほんの寺子屋には、紙まで出した仲間がいます。月謝3,000円で、師匠が伴走し、判型や余白でつまずいたところを聞ける。印税は100%あなたのもので、私たちが受け取ることはありません。
まずは無料の見習い登録から覗いてみてください。
なお、この記事の数字は執筆時点でKDP公式ヘルプに記載されているものです。仕様や料金は変わることがあるので、実際に出すときはKDP公式の最新の記載でご確認ください。
※この随筆は個人の見解・体験にもとづく読み物です。お金・税・法律に関わる話は一般論であり、 実際のご判断は必ず公式情報や専門家でご確認ください。