Kindle出版は0円で始められる、とよく言われます。実際そのとおりなのですが、出してみると「これは費用だな」と感じる場面がいくつかありました。かかるお金とかからないお金を、公式の数字を引きながら全部書き出してみます。

支度中…
Kindle出版は0円で始められる、とよく言われます。実際そのとおりなのですが、出してみると「これは費用だな」と感じる場面がいくつかありました。かかるお金とかからないお金を、公式の数字を引きながら全部書き出してみます。
ほんの寺子屋は、師匠の伴走と仲間との学び合いで自分の本を世に出す出版コミュニティ。 気になったら、まずは見習いから覗いてみてください。
「Kindle出版って、結局いくらかかるんですか」
入門の面談でいちばん多い質問がこれです。答えは0円です。KDPにアカウントを作って、原稿と表紙をアップロードすれば、一円も払わずに本は世に出ます。ただ、私が最初の一冊を出したとき、実際に財布から出ていったお金は0円ではありませんでした。払わなくてもよかったのに払ったもの、払わずに済ませたつもりが後から効いてきたもの。その内訳を、公式の数字を引きながら全部書き出してみます。
まず前提の確認です。Kindle Direct Publishing(KDP)にアカウントを作るのは無料です。原稿をアップロードするのも、表紙を差し替えるのも、価格を変えるのも、出版を取り下げるのも、費用は発生しません。審査に落ちても、何度出し直しても同じです。
ISBNもいりません。紙のペーパーバックを出す場合はKDPが無料でISBNを割り当ててくれます。日本の出版社から本を出すときに必要になる取次や書店との交渉も、当然ながらありません。
つまり、Kindle出版に初期費用という概念はありません。ここが商業出版とも、いわゆる自費出版とも決定的に違うところです。
では、なぜ「Kindle出版 費用」と検索する人が絶えないのか。理由は二つあると思っています。
ひとつは、出版そのものは0円でも、本を作る過程で買いたくなるものが出てくること。表紙、校正、素材、書くための道具。これは後で詳しく書きます。
もうひとつは、印税から自動的に引かれるお金があること。財布からは出ていかないので費用と呼びにくいのですが、手取りは確実に減ります。むしろこちらのほうが、長い目で見ると金額は大きくなります。
Kindleの電子書籍には、ロイヤリティ(印税)率を35%と70%から選ぶ仕組みがあります。そして70%を選べる価格帯は決まっています。
Amazon.co.jpの場合、希望小売価格の要件は次のとおりです。
| ロイヤリティ | 希望小売価格の下限 | 上限 |
|---|---|---|
| 35% | 99円 | 20,000円 |
| 70% | 250円 | 1,650円(税込み) |
99円で出すと35%しか選べません。250円まで上げれば70%が選べます。同じ本でも、価格を151円上げるだけで手取りの率が倍になるということです。ここを知らずに99円で出して、あとから値上げする人をよく見ます。
ただし70%には条件があります。電子書籍のロイヤリティによれば、70%は「希望小売価格から配信コストを差し引いた額の70%」です。35%のほうには配信コストの差し引きがありません。
配信コストはファイルサイズで決まります。価格設定ページにはAmazon.co.jpの単価が1MBあたり1円と明記されています。文字だけの本なら数MBに収まるので、数円の世界です。図版や写真をたくさん入れると効いてきます。
もうひとつ見落とされがちなのが消費税です。日本の読者への販売には10%の消費税がかかり、日本のマーケットプレイス向けの価格設定には「出版者に支払われるロイヤリティは、消費税を差し引いた後の希望小売価格から計算します」と書かれています。
ここまでを使って、500円の本が1冊売れたときの手取りを計算してみます。
税抜の価格は500 ÷ 1.1で約454円。ファイルサイズを2MBとすると配信コストは2円。
70%を選んだ場合、(454 − 2) × 0.7 で約316円。 35%を選んだ場合、454 × 0.35 で約159円。
同じ1冊で157円の差です。100冊売れれば15,700円変わります。数字は変わりうるので、実際に出すときは必ずKDP公式の最新の記載で確認してください。
ここからは、払わなくても出せるけれど、払う人が多いお金です。
Kindle出版の費用で、いちばん金額が動くのが表紙です。
外注すると、クラウドソーシングで数千円から、デザイナーに直接頼めば数万円というのが相場感です。自分で作るなら0円ですが、その代わり時間がかかります。私は最初の一冊を自分で作り、二冊目で外注し、いまはまた自分で作っています。行ったり来たりしました。
はっきり言えるのは、表紙は削ってはいけない費用だということです。Kindleストアで読者が最初に見るのはサムネイルで、それも親指の爪ほどの大きさです。そこで選ばれなければ、中身がどれだけ良くても読まれません。0円で出せることと、0円で出すべきことは別の話です。
プロの校正に出せば数万円かかります。出さなくても出版はできます。
私は外に出していませんが、その代わり音読しています。声に出すと、読点の位置がおかしいところで必ずつっかえます。費用0円で効果がいちばん高かったのはこれでした。
原稿はWordでもGoogleドキュメントでも書けます。KDPは無料のKindle Createも配っています。ここに費用をかける必然性はありません。
ただ、書く時間を確保するために有料の何かを使うことはあります。私の場合はそれが静かな喫茶店のコーヒー代でした。これは費用というより、続けるための投資だと思っています。
電子書籍だけなら、話はここまでです。紙のペーパーバックを出すと、費用の話が一段複雑になります。
紙の本は1冊売れるたびに印刷されます。その印刷コストが印税から引かれます。印刷コストのAmazon.co.jpの表は次のとおりです。
| インク | ページ数 | 固定コスト | 1ページあたり |
|---|---|---|---|
| モノクロ | 24〜110ページ | 422円 | なし |
| モノクロ | 110〜828ページ | 206円 | 2円 |
| カラー(標準) | 72〜600ページ | 206円 | 3.50円 |
| カラー(プレミアム) | 24〜40ページ | 475円 | なし |
| カラー(プレミアム) | 42〜828ページ | 206円 | 4円 |
カラーにした瞬間にページ単価が倍になります。図版の多い本を紙で出すときに、ここで一度立ち止まることになります。
ペーパーバックのロイヤリティの計算式は「ロイヤリティレート × 希望小売価格 − 印刷コスト」です。レートは希望小売価格の水準によって50%か60%になります。
200ページのモノクロの本を、1,200円(税込)で出したとします。
税抜の価格は1,200 ÷ 1.1で約1,090円。 印刷コストは206 + 2 × 200で606円。 60%で計算すると、1,090 × 0.6 − 606 = 48円。
1冊売って48円です。電子書籍で500円の本を売ったときの316円と比べると、6分の1以下になります。
同じ本を1,600円(税込)にすると、税抜約1,454円、1,454 × 0.6 − 606 で266円。400円上げただけで手取りが5倍以上になります。
紙の本の値付けが電子と違うのは、固定費が乗っているからです。安くすると手取りがゼロに近づき、下手をするとマイナスで出版できません。紙を出すなら、ページ数と価格を先に決めてから本文の分量を設計したほうがうまくいきます。私はこれを知らずに、薄い本を安く出して、ほとんど残らない経験をしました。
紙の自費出版の世界では、数十万円から数百万円という見積もりが出てきます。あれが何の費用なのかというと、多くは印刷代と在庫と流通です。何百部かをまとめて刷って、倉庫に置いて、書店に配る。その前払いです。
Kindle出版にはこれがありません。電子書籍には在庫がなく、ペーパーバックは注文が入ってから1冊ずつ印刷されるからです。刷ってから売るのではなく、売れてから刷る。だから前払いする費用が発生しません。
ここで一つだけ、はっきり書いておきます。
Kindle出版は0円でできます。にもかかわらず「Kindleで出しませんか」と持ちかけて数十万円を請求する話は実在します。何にいくらかかるのかの内訳を出せない相手には、お金を渡さないほうがいいと思います。判断の基準は単純で、その費用がなくても本は出せるかどうかです。Kindle出版の場合、答えはたいてい「出せる」です。
初期費用が0円なので、Kindle出版の損益分岐は驚くほど単純です。かけた費用を、1冊あたりの手取りで割るだけです。
表紙に1万円かけて、500円の本を70%で出したなら、手取りは1冊約316円。32冊売れれば回収できます。表紙を自分で作ったなら、1冊目から黒字です。
これは商業出版でも自費出版でも成立しない構造です。回収すべき金額が最初から小さいので、失敗しても失うものがほとんどありません。
とはいえ、費用がかからないことと、コストがかからないことは違います。
一冊書くのに私は3ヶ月かかりました。平日の夜と土曜の午前を使っています。時給に換算するのは野暮ですが、Kindle出版でいちばん大きなコストは間違いなく時間です。
だからこそ、お金で買える部分は買ってもいいと思っています。表紙を外注するのも、道具を揃えるのも、その時間を書くほうに回すためなら意味があります。0円で出せることを、全部自分でやる理由にしなくていい。ここは最初の一冊を出したあとに、ようやく腑に落ちた感覚でした。
かかりません。KDPのアカウント作成、原稿と表紙のアップロード、出版、価格変更、出版の取り下げ、いずれも無料です。費用が発生するのは、表紙の外注など自分で選んだ支出と、売れたときに印税から引かれる分だけです。
70%のロイヤリティを選んだ場合は配信コスト(Amazon.co.jpでは1MBあたり1円)が引かれます。35%を選んだ場合は引かれません。ペーパーバックはこれとは別に、1冊売れるごとに印刷コストが引かれます。
自分で作れば0円、クラウドソーシングなら数千円から、デザイナーへの直接依頼なら数万円というのが実際に見かける幅です。金額よりも、Kindleストアのサムネイルで選ばれる表紙になっているかどうかで判断したほうがいいと思います。
売れます。ただし、表紙とタイトルだけは手を抜かないことが条件だと感じています。中身の質は読まれてから効いてくるもので、読まれる前に効くのは表紙とタイトルだからです。
出版の費用は変わらず0円ですが、1冊売れるごとに印刷コストが印税から引かれるため、手取りは電子書籍より小さくなります。ページ数と価格の設計を先にしておくことをおすすめします。
ここまで費用の話ばかり書いてきましたが、結論はきわめて簡単です。Kindle出版は0円で始められて、かけるかどうかを自分で決められる費用がいくつかあるだけ。それも、数千円から数万円の世界です。
ほんの寺子屋は、その一冊目を一人で抱えこまずに出すための場所です。月謝3,000円で、師匠が伴走し、先に出した仲間が原稿を読みます。印税は100%あなたのもので、私たちが受け取ることはありません。数十万円の見積もりを出す会社とは、そもそも設計が違います。
まずは無料の見習い登録から、中を覗いてみてください。費用の相談だけでも構いません。
なお、この記事に書いた金額はすべて執筆時点でKDP公式ヘルプに記載されている数字です。手数料や価格帯は改定されることがあるので、実際に出版するときは必ずKDP公式の最新の記載でご確認ください。
※この随筆は個人の見解・体験にもとづく読み物です。お金・税・法律に関わる話は一般論であり、 実際のご判断は必ず公式情報や専門家でご確認ください。