買ったのに読んでいない本が、棚に何十冊もある。うしろめたさの正体を、少し違う角度から眺めてみると、あれは負債ではなく在庫なのだと思えてくる。
本棚に、読んでいない本が並んでいる。背表紙を見るたびに、小さな罪悪感がちくりと刺す。
でも最近、考えを変えた。積ん読は、負債ではなく在庫だ。
読みたいと思って手に取った、その瞬間の自分の関心。それが背表紙の形で棚に残っている。つまり積ん読の棚は、過去の自分が未来の自分に宛てた、関心の地図なのだ。
書く側になって、見え方が変わった
本を書く側にまわってから、この在庫のありがたみが分かってきた。
何かを一冊書こうとするとき、いちばん困るのは「何を書くか」ではなく「どこから深めるか」だ。そのとき、積んでおいた本が効く。ぱらぱらめくると、忘れていた関心が呼び起こされ、隣の棚の一冊とつながって、思いがけない切り口が生まれる。
読み切っていなくていい。目次を眺め、線を引いた数ページを読み返すだけで、在庫は仕事をしてくれる。
積むことを、こわがらない
だから私は、積ん読を減らそうとするのをやめた。むしろ、気になった本は迷わず積む。
積んだ冊数は、これから書けるかもしれない本の数に、静かに比例している。今日も一冊、在庫を増やした。いつか、どこかの原稿で、この一冊に助けられる日が来る気がしている。
※この随筆は個人の見解・体験にもとづく読み物です。お金・税・法律に関わる話は一般論であり、 実際のご判断は必ず公式情報や専門家でご確認ください。

