はじめての本に、いくらの値をつけるか。安くすれば読まれる気がして、でも安っぽく見えるのもこわい。あの夜、設定画面の前で長いこと固まっていた話。
原稿ができて、表紙も決まって、あとは値段を入れるだけ。その最後の一マスの前で、私はいちばん長く固まった。
99円にすれば、手に取ってもらえる気がする。でも、それでこの本の価値が決まってしまう気もする。かといって高くして、誰にも開かれなかったら。
答えは、棚の中にあった
迷った末にやったのは、同じジャンルの棚を、ただ眺めることだった。
売れている本が、いくらで並んでいるか。極端に高い本は、知らない著者だと素通りされている。極端に安い本は、かえって中身を疑われている気配がある。相場の真ん中あたりに、いちばん静かに手が伸びていた。
値段は、本の価値を決める札ではない。読者と出会うための、入り口の広さなのだと、そのとき腑に落ちた。
変えられる、と知って楽になった
そしてもう一つ。値段は、あとから変えられる。
出したては手に取りやすく。反応を見て、レビューがついたら見直す。そう思えた瞬間、最後の一マスに、すっと数字を入れられた。
完璧な値付けなんて、最初から狙わなくていい。育てていくものだと考えると、肩の力が抜ける。(料率の条件は変わるので、最新はKDP公式で確かめてください。)
※この随筆は個人の見解・体験にもとづく読み物です。お金・税・法律に関わる話は一般論であり、 実際のご判断は必ず公式情報や専門家でご確認ください。

