本を出版したいと思ったとき、道は商業出版・自費出版・KDP(Kindle出版)の3つ。費用、決定権、期間、印税の違いを整理し、目的別にどの道を選ぶかを解説。売れる部数の現実も先に示します。
「自分の経験や知識を本にしたい。でも、出版社に持ち込むのか、お金を払って出すのか、自分で電子書籍にするのか、どれが自分に合うのか分からない」。本を出版したいと思い立った人が最初にぶつかるのは、書くことより、道の選び方です。道は大きく3つあります。出版社が費用を持つ商業出版、著者が費用を持つ自費出版、そしてAmazonのKDPで自分で出すKindle出版です。この記事では、それぞれの仕組みと費用、決定権、期間を比べ、目的別にどの道を選ぶかを書きます。最後に、どの道を選んでも避けられない「売れる部数」の現実にも触れます。
本を出版したいなら、まず3つの道を知る
3つの道は、「誰がお金を出し、誰が決めるか」で分かれます。
商業出版は、出版社が制作費・印刷費・流通費を負担し、著者は印税を受け取ります。お金を出すのは出版社なので、出すかどうかを決めるのも出版社です。
自費出版は、著者が制作費と印刷費を負担して、出版社や印刷会社に本を作ってもらいます。お金を出すのは著者なので、出すかどうかは著者が決められます。その代わり、費用は数十万円から数百万円になります。
KDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング)は、Amazonのサイトで著者が自分で本を登録し、審査を経て販売する仕組みです。出版に費用はかからず、出すかどうかは著者が決め、審査はAmazonのコンテンツガイドラインへの適合を確認するものです。電子書籍だけでなく、注文ごとに1冊ずつ印刷する紙の本(ペーパーバック)も出せます。
以下、それぞれをもう少し詳しく見ます。
商業出版 出版社が費用を持ち、著者は選ばれる側
商業出版は、企画が出版社の会議を通ることが前提です。持ち込みの企画書が採用される割合は低く、一般には、すでに知名度がある、専門分野で実績がある、SNSや講演で読者を持っている、といった要素が求められると言われます。編集者が付き、書店に並び、著者は制作費を負担しません。
一方で、著者の決定権は小さくなります。タイトル、表紙、発売時期、価格は出版社が決めます。印税は一般に定価の数%から10%程度と言われ、初版の部数も出版社の判断です。企画が通ってから発売までは、通常1年前後かかることが多いとされます。
この道は、「本を出したい」という気持ちだけでは進めません。出版社が「この著者の本は売れる」と判断する材料が先に必要です。逆に言えば、KDPで本を出し、読まれた実績を持って持ち込む、という順番もあり得ます。
自費出版 費用は著者が持ち、紙の本が手元に残る
自費出版は、出版社や印刷会社に費用を払って本を作ってもらう道です。編集、装丁、印刷、場合によっては書店への配本まで含めて、費用は数十万円から数百万円が目安です。大手出版社系の自費出版サービスでは、プロの編集と流通、メディア紹介を含めて200万〜300万円というものもあります。
決定権は著者にあり、内容もタイトルも自分で決められます。紙の本が数百部単位で手元に残るので、記念、配布、家族や関係者への贈呈が目的なら、この道が合います。
注意したいのは、費用と回収の関係です。数百万円かけた本が販売で回収できることはまれで、自費出版は基本的に「出すこと自体」に価値を置く選択です。紙の自費出版の相場と、KDPのペーパーバックとの違いは /guide/jihi-shuppan-hiyou に分けて書きました。
KDP(Kindle出版) 費用0円で、自分で決めて、今日から始められる
KDPは、AmazonのKindleストアに自分で本を登録する仕組みです。アカウントを作り、著者情報・銀行口座・税務情報を登録し、原稿(EPUBかWordのDOCX)と表紙をアップロードし、価格を決めて出版ボタンを押します。出版に費用はかからず、審査は通常3〜10営業日です。手順の全体は /guide/kindle-shuppan-yarikata に、費用の内訳は /guide/kindle-shuppan-hiyou に書いています。
電子書籍のロイヤリティは35%か70%を選べます。Amazon.co.jpで70%を適用するには、税抜の希望小売価格を250円〜1,250円にし、KDPセレクト(90日単位の独占販売プログラム)に登録するのが条件です。紙の本(ペーパーバック)も、注文ごとにAmazonが1冊ずつ印刷するオンデマンド方式で出せ、在庫も印刷費の前払いも不要です。ロイヤリティは希望小売価格1,000円以上で60%(999円以下は50%)から印刷コストを引いた額で、Amazon.co.jpの黒インクなら固定206円に1ページ2円を足した額が印刷コストです。
決定権は全部著者にあります。タイトル、表紙、価格、発売時期、そして出版後の修正も自分で決められ、本文はいつでも差し替えて再出版できます。1週間に作成できるタイトル数は電子・紙それぞれ10点までという上限はありますが、個人が困る数ではありません。
参考: KDP公式ヘルプ(https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/G200644210)
参考: KDP公式ヘルプ(https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP/help/topic/G201834340)
本を出版したい目的で、3つの道を選ぶ
比較を目的別に整理します。
書店に並べたい、編集者と一緒に作りたい、出版社の看板がほしい。この場合は商業出版が唯一の道です。ただし選ばれる側なので、企画書と実績を先に用意することになります。
紙の本を手元に数百部持ちたい、記念や贈呈が目的で、費用は覚悟している。この場合は自費出版が合います。
まず世に出したい、費用をかけたくない、あとから直したい、読まれるかを試したい。この場合はKDPです。電子と紙の両方を同時に出すこともでき、両方の詳細情報を一致させると、1つの商品ページにまとめて表示されます。
3つの道は排他ではありません。KDPで出した本が読まれ、それを材料に商業出版の企画が通る、という順番は現実にあります。KDPで紙の本も出せるので、「紙で手元に残したい」だけなら、自費出版でなくKDPの著者用コピー(印刷原価で最大999部まで注文できる)で足りる場合もあります。
どの道を選んでも、本を出版したあとに「売れる」は別問題
最後に現実を書いておきます。KDPで出た本の平均販売は100部未満と言われています。初心者の最初の1〜2冊は、月500〜3,000円が中央値に近い水準です。商業出版でも、初版が完売しない本は多く、自費出版は回収を前提にしない道です。つまり、どの道でも「出すこと」と「売れること」は分けて考える必要があります。
そのうえで、KDPは失敗の費用が小さい道です。0円で出し、売れなければ直し、2冊目を出す。運営者は2025年からひとりで131冊を出し、月15万円のロイヤリティに達した月があります(Amazonで全冊確認できます)。これは1冊の当たりではなく、費用をかけずに冊数を重ね、何が読まれるかを1冊ずつ確かめた結果です。売れない理由と読まれる本の条件は /guide/kindle-shuppan-urenai に、自分の経験を本にする作り方は /guide/keiken-wo-hon-ni-suru に書きました。
まずは、あなたの詳しいことが本になるか確かめる
どの道を選ぶにしても、最初に決めるのはテーマです。あなたの詳しいことが本になるかどうか、無料の出版診断(/shindan)でテーマを1つ送ってもらえれば、その分野の既刊数、競合の評価、読まれ方の目安、近い既刊の例を運営者が見て、2営業日以内にメールで返します。売り込みの電話やLINEはしません。
よくある質問
出版社に持ち込むのと、KDPで出すのは、どちらを先にすべきですか
実績も読者もまだ無い段階なら、KDPを先にするほうが動きやすいです。費用がかからず、出版までの期間も短く、読まれたかどうかの数字が残ります。その数字を持って持ち込むほうが、白紙の企画書より話が進みやすいと考えられます。
KDPで出した本を、あとから出版社から出し直すことはできますか
KDPの通常の出版は非独占なので、契約上の制約は原則ありません。ただしKDPセレクトに登録している間(90日単位)は電子版がKindleストアの独占販売になるので、他社から電子版を出すなら自動更新を切って期間の終了を待つ必要があります。出版社側の条件は個別に確認してください。
本を出版したいのですが、文章を書くのが苦手です
3つの道のどれでも、書く工程を人に頼む方法はあります。商業出版なら編集者やライターが付くことがあり、自費出版とKDPでは執筆込みの制作を請け負うサービスがあります。ただし内容の責任と、KDPの場合のAI生成コンテンツの申告は著者に残るので、丸投げではなく、テーマと言いたいことは自分で決めてください。
※このガイドはKDPの公式ヘルプと運営者の出版実績にもとづいて書いています。仕様や料率は変わることがあるため、 実際のご判断は必ずAmazon KDPの最新の公式情報でご確認ください。

